2020年の春から改造「悠」を出品し始めて現在まででトータルで170本を超えました。長く続けてこられたのはREIZAN TUNEDの尺八を手にした人々からの反響によることが大きいです。ヘビーユーザーの皆さんや尺八仲間にREIZAN情報を拡散してくださった皆さん本当にありがとうございました。手元にある残り数本の「悠」で積極的出品は最後となります。最新の研究成果も取り入れて有終の美を飾りたいと思っています。

オークション出品を初めた頃に愛知県でご活躍されている演奏家のYTさんからメールをいただきました。今思い返せばこのメールが励みになって一段と改造にのめり込んでいったような気がします。（一部抜粋して紹介させていただきます。）

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当初は悠の歌口や指孔付近と管尻をいじった物、と勝手に想像しておりましたが、そうではなく改作といってもよいほど完成度を上げられたものだと実感しました。比較対象は従来の悠のレベルではなく、常用の泉州タイプAとの差の確認であることをすぐ認識しました。

・悠は我慢の楽器だったが、今回の楽器は吹いて気持ち良い。ストレスを感じない。

・普段は泉州Aで吹く曲を悠で吹いてみました我慢の部分がほぼない。違和感が少ない。

・鳴り全体はほぼ均一で、特定の音のみの鳴りを誇示するタイプでなく、曲を吹いてその扱いやすさを実感できる。

・プラスティック管であることは関係なく、吹奏中時にそれを忘れる。

・大甲音域もよく伸びる。大甲ハまで無理がない。泉州特有の大甲ツ（四の４孔半開）で何とか近い音程まで確保できる。

・わずかに私の泉州Aより曲が吹きやすい部分がある。

・音色は泉州Aほどのバリバリとした倍音分布はないが、気持ちのよい倍音分布で、まろやかさとコクを感じる音。甲音域の抜けは泉州Aにそん色ない。

・半音、メリ音の痩せが少ない。

・全体のエネルギーは泉州Aに一歩譲るが、音の均一性を考えると扱いやすい。

・泉州Aでできない、コロ、カラは大変やりやすい。ppのコントロールもしやすい。

泉州吹きには総じて泉州のよさと吹きやすさを両立したバランスの良い楽器で、ちょっと驚きました。

①泉州スタイル歌口・・・舌面角と天口の角度は泉州オリジナルタイプAとほぼ同じ。舌面角の傾斜を急角度にするため舌面最上部に樹脂を盛り再構築するのがREIZANの特許でエッジは元の位置から1mm前になります。エッジサイドを削り込み直線的なエッジから滑らかに円形に移行させるのが泉州スタイルの最重要ポイントです。開口部の内径の縦横がともに19.5mm（泉州と同じ）になるよう息返しを付加し泉州スタイルの馬蹄形に仕上げています。（画像２〜６）

②指孔拡大・・・ 音量アップとレスポンス向上を目指して拡大していますが内部下方に広げ表面は大きくなりすぎないようにしています。（画像７）

③現代調律・・・悠には伝統調律の名残りがあります。それを現代調律に直すため、第３孔は下に移動し（画像８）第５孔は傾斜パテで補正（画像９）しています。

④New!! 開口部の滑らかな曲面・・・泉州工房の三塚氏が動画で「開口部は平面ではなくわずかにRをつけている」と言っていたことを思い出しての最新の研究です。古い都山流尺八によくあるような丸みを帯びた開口部は口元にピッタリフィットすることをねらっているのですが、内径が20mmでも丸みの頂点部分で計測すると実質内径25mm以上あったりして塞ぎにくく楽器を押しつけた吹き方になりやすいです。逆に琴古流によくみられる平面的な開口部は内側の角が直角に切り立っていて最初は違和感がありますが、楽器を押しつけない奏法の人には口元の自由度が高いです。「フィット感」をとるか「操作性の良さ」をとるか悩ましいところですが、それを両立させるのが今回採用した「内に向かってわずかに傾斜させる」方法です。天口の左側は「への字」に右側は「逆への字」になっていますが、パッとみただけでは気づくことはなく、光を反射させてやっとわかるぐらいの微傾斜です。（画像10）たったこれだけの傾斜ですが非常に構えやすくなり、迷うことなく最適な位置に導かれるようです。

【諸元】長さ540mm 重さ419g 頭部直径37mm   底部直径53mm 歌口内径縦19.5mm 横19.5mm エッジ深さ4mm 最大指孔12mm

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