1940年代、バルジュー71搭載の3ダイヤル手巻きクロノグラフです。バルジュー71は超高価なロレックスのデイトナ手巻きモデルに採用されたバルジュー72系の前身となるモデルで、72よりも口径が大きく、その分、耐久性、信頼性が高いキャリバーで、当時の価格は相当に高価でしたが、軍事用、航空用、医療用など、高くても必要とされる分野はあるもので、そういうところで使われてきた希少なものです。バルジュー72はこの71をコストダウンし、小型化し、量産化したものです。

 このクロノグラフはステンレススチール製の3ピース構造のケースが採用されています。裏蓋の内側にはメーカー名の刻印とケース材質と製造国の刻印がありますが、一部に消した痕が有り、何を消したか顕微鏡で見てみましたが、BACKの文字でした。つまり、ベゼルやミドルケースがステンレススチールでないものをメインのラインナップとして持っており、この時計のように全てステンレススチールの仕様のものは製造時にBACKの文字を消し、総ステンレススチール仕様の機種（本出品物）を製品化したものと思われます。非常に高価なクロノグラフは受注生産のような扱いが多く、この時計のミドルケースもラグ回りの加工手法を見ると、量産ケースに多く見られる圧縮成形では無く、鉄の塊から削り出しでラグを作っていますので、ベゼルやミドルケース素材がステンレススチールのもの（たぶんハイグレード仕様）は極少量生産だったと思われます。その痕跡がBACKの文字消し跡で推定されます。

 さて、この時計の文字盤ですが、カーソル印刷線の細さ均一さ、インダイヤル内の印刷精度とエッジの痕跡から、ブラックミラー仕上げのオリジナルと推定されます。また、写真ではわかりにくいのですが、文字盤の12時下位置にGOTHAMの文字が印刷されており、それが消えかけています。画像の通り、破損しやすい分積算計の歯車押さえのバネも正規品がそのまま残っており、異機種、手作り部品での交換はありません。クロノグラフの各機能も正常に動作し、正確にゼロリセットします。

出物少ないブラックミラー、オリジナル文字盤のバルジュー71搭載クロノグラフです。

安値入手のチャンスですので、お探しの方はお見逃しなく・・ 

 時計のサイズはリューズを含まない直径が35ｍｍ、ラグを含む長さが42ｍｍ、

厚みが12ｍｍ、ベルトを付けるラグ幅は18ｍｍです。

これだけでも大変珍しく、NEIGHBORHOODがアンティーク時計を販売していた際の専用ボックスもお付けします。